石田大気さん(18)
並んだ札の上に、グッと体を倒した。向かい合う相手の頭と頭が、ぶつかり合いそうだ。札が読み上げられると、ブーメランのように右手が飛んだ。並んでいた札はまとめて吹き飛んだ。どちらが取ったのか、素人目にはわからなかった。兵庫県立川西明峰高3年の石田大気(おおき)さん(18)は昨年の全国競技かるた京都大会「B2級」で優勝した。目標は「競技かるたで名人になること」。
興味を持ったのは中学3年の2学期。アニメ「ちはやふる」を見たことだ。「頭だけでなく体力も必要な競技」だと知った。「音に対しての反応がすごくて格好いい」とも。
受験勉強の時期だったが、競技かるたへのあこがれは強まるばかり。動画サイトで実際の試合を見ると、アニメよりもっと迫力があった。「百人一首を覚えたい。それなら受験勉強も頑張らないと」と思った。
札を覚えるのは家族のいない部屋で。努力している姿を見られたくなかったから。
競技かるたは「決まり字」を覚えるのがコツだ。最初の1字で札が決まるのは7首。たとえば「む」と聞けば「村雨(むらさめ)の露もまだひぬ槇の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮」。これしかない。最高でも6字聞けば、どの札か決まる。そこで、決まり字と下の句の関係をたたき込んだ。歌の解釈などは後回し。力をつけるにつれて「意味を知らないのは恥ずかしい」と思うようになり、今ではほとんどの歌を味わう。「恋の歌より気の強さが表れている方が好きです」
練習は、所属する「大阪暁会(あかつきかい)」で毎週土曜午後1時から7時まで。激しく動くのでジャージー姿。足が滑らないように裸足。会長の山下義(ただし)さん(79)は石田さんについて…
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