択一式クイズ 多数派の選択肢に「正解」が多い仕組みとは?例えば百人一首では…

毎年、TBS系列で春と秋の番組改編期に放送される『オールスター感謝祭』(10月6日放送)。番組宣伝も兼ねた100名を超える芸能人が択一式クイズの解答者となり、一般常識問題やスタジオでゲームに挑戦する勝者を予想したりする人気特番だ。それを見ていると、概ねクイズは多数派の選択肢が正解になるケースが多いが、なぜなのか。ニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏がその仕組みを解説する。
毎年、TBS系列で春と秋の番組改編期に放送される『オールスター感謝祭』(10月6日放送)。番組宣伝も兼ねた100名を超える芸能人が択一式クイズの解答者となり、一般常識問題やスタジオでゲームに挑戦する勝者を予想したりする人気特番だ。それを見ていると、概ねクイズは多数派の選択肢が正解になるケースが多いが、なぜなのか。ニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏がその仕組みを解説する。


テレビでは難問・奇問を含むクイズ番組がたくさん放送されているが、択一形式の問題が出されることが一般的である。択一形式の問題は、答えが全くわからない人でも、とりあえず何か選択肢を選ぶことができる。このため、参加者にはクイズに参加したという達成感が残るメリット(?)もある。

最近では、多数の人に同じ択一形式の問題を答えてもらい、その回答の分布をまず示した上で、正解を明らかにする番組もある。こういう問題では、選択した人がもっとも多い選択肢が正解になっていることが多い。どうして多数派の選択肢が正解の場合が多いのか。その仕組みを考えてみよう。

例として、クイズで次の4択の問題を考えてみたい。

【問題】
次の4人は、いずれも六歌仙に含まれている歌人です。この中に、1人だけ小倉百人一首には入っていない歌人がいます。誰でしょうか?

(a)僧正遍昭 (b)文屋康秀 (c)喜撰法師 (d)大友黒主

みなさんには、正解がわかっただろうか。まず、先に答えを言ってしまおう。

六歌仙のうち、小倉百人一首に入っていないのは、(d)の大友黒主で、これが正解となる。古文や文学史、カルタに詳しい人であれば、すぐに答えがわかっただろう。六歌仙には、この他に在原業平と、小野小町がおり、この2人も、小倉百人一首に入っている。実は、この問題では一般の人でもなじみの深そうなこの2人を、敢えて選択肢に含めないことで、クイズの難度を引き上げている。

さて、このクイズを、一般の人100人に出題するとしよう。この100人の中には、文学や歴史に詳しい人や、そういう分野にまったく興味がない人など、いろいろな人がいるはずだ。そこで、例えば次のような状態だったとしよう。

・100人のうち、約3分の2にあたる64人は、まったく答えがわからない。
・21人は、選択肢の4人のうち、小倉百人一首に入っている人を1人だけは知っている。
・14人は、選択肢の4人のうち、小倉百人一首に入っている人を2人知っている。
・最後に残る1人だけが、小倉百人一首に入っている人を3人とも知っていて、正解がわかる。

このとき、100人の回答の分布は、平均的にどうなるだろうか。

まず、全く答えがわからない64人は、とりあえず、あてずっぽうで(a)~(d)の中から1つを選ぶだろう。4つの選択肢に均等に回答が分かれるとすると、それぞれの選択肢に16人ずつ(=64人÷4)の回答となる。(d)を選ぶ人は、平均して、16人となる。

小倉百人一首に入っている人を1人は知っているという21人は、その1人を除いて、残り3つの選択肢から1つを選ぶだろう。そうすると、(d)を選ぶ人は、平均して、7人(=21人÷3)となる。

小倉百人一首に入っている人を2人知っているという14人は、その2人を除いて、残り2つの選択肢から1つを選ぶ。そうすると、(d)を選ぶ人は、平均して、7人(=14人÷2)となる。そして、正解を知っている最後の1人は、当然、(d)を選ぶ。

これらを足し算すると、(d)を選ぶ人は、31人(=16人+7人+7人+1人)となる。一方、(a)~(c)の選択肢は、いずれも、23人ずつとなる。

これはあくまでも平均的な分布ではあるが、正解の(d)が多数派となることは、ほぼ間違いないだろう。

100人の状態が少し違っていて、まったく答えがわからないという64人以外の36人も、小倉百人一首に入っている人を1人しか知らなかったとしよう。この場合、36人のうち、(d)を選ぶ人は、平均して、12人(=36人÷3)となる。結局、(d)を選ぶ人は28人(=16人+12人)となり、(a)~(c)の各24人を上回る。やはり、正解の(d)が多数派となる可能性が高い。

このように、択一形式の問題では、正解を完全には知らない人どうしでも、それぞれが持つ断片的な知識を集めると、正解を選ぶ確率を高めることができるのである。よって、…

 

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