大会には、同市立の中学校など5校の生徒に私たちが加わり、計31人の中高生が参加。トーナメント形式で対戦しました。参加者には、英語版の画像が送られ、100首のうち、大会で使用する20首があらかじめ伝えられていました。
競技に先立ち、この催しを主催した国文学研究資料館(立川市)教授の神作研一さんが百人一首について解説してくださいました。また、江戸時代の大変美しい百人一首かるたを見せてくれ、参加者は興味津々で見入っていました。
競技では、対戦する2人が向かい合わせに座り、それぞれ10枚ずつ札を前に置き、読み手が読んだ札を素早く取ります。相手陣地の札を取ったら、自分の札を相手陣地に送るなどして、自分の札が先になくなった方が勝ち。これは、今回使用した札の数を除けば、一般的な百人一首かるた競技のルールと同じです。
イメージ壊さず 苦心の英訳
英語版かるたは、同館のトランスレーター・イン・レジデンス(招へい翻訳家)、ピーター・マクミランさんが独自に考案。日本在住30年のマクミランさんは、日本語から英訳する際、掛詞や縁語などに細心の注意を払ったそうです。中でも翻訳が難しかったのは、小野小町の「花の色は」で始まる一首だったそう。レトリックが複雑で、「もとの歌が持つ重層的なイメージを英語で表現するのに苦心した」といいます。
かるたの札は、読み札と取り札両方に絵が描かれ、絵合わせのようになっていて、百人一首の知識がなくても競技を楽しむことができるよう工夫されています。ただ、歌の意味をよく伝えるために、英語版では語順がオリジナルの日本語のものと違っていることもしばしば。きちんと英語版も覚えていないと、練習を重ねた相手より早く札を取ることは到底できません。
対戦が始まると、会場は一気に張り詰めた雰囲気に。3分間の札の暗記時間の後、マクミランさんが読み札を読み始めました。日本語の場合と同様、上の句を1回、続いて下の句を、2回繰り返します。マクミランさんの歌うような声が流れ、すぐに畳をはじく音があちこちから聞こえました。参加者はみな一心不乱に札に飛びつき、真剣勝負が繰り広げられました。
最終的に勝ち残ったのは、立川市立立川第一中学校2年の佐々木桜音さんと、同中3年の立川あり彩さんの2人で、同館の館長で日本文学者のロバート・キャンベルさんらから記念の扇などを受け取りました。佐々木さんは、「単語と絵を覚え、友達と模擬戦をするなどして準備しました」と話していました。英語を使った百人一首かるたはこれまでにない体験で、かなり頭を使ったつもりですが、私たちジュニアプレスは全員、1回戦で敗退してしまいました。
キャンベルさんは、英語版百人一首について「英語と古典という二つの広い入り口があり、英語を勉強しながら新たな視点で古典を読むことができる」と、その意義や面白さを強調していました。
マクミランさんは、「紀友則が散る桜を歌った『久方の』など、百人一首には、はかないものをめでるという、西洋人とは正反対の美意識がよくあらわれています」と話していました。来年には、母国アイルランドで大会を開催する計画があるそうです。英語版ができたことで…
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