テレビでは難問・奇問を含むクイズ番組がたくさん放送されているが、択一形式の問題が出されることが一般的である。択一形式の問題は、答えが全くわからない人でも、とりあえず何か選択肢を選ぶことができる。このため、参加者にはクイズに参加したという達成感が残るメリット(?)もある。
最近では、多数の人に同じ択一形式の問題を答えてもらい、その回答の分布をまず示した上で、正解を明らかにする番組もある。こういう問題では、選択した人がもっとも多い選択肢が正解になっていることが多い。どうして多数派の選択肢が正解の場合が多いのか。その仕組みを考えてみよう。
例として、クイズで次の4択の問題を考えてみたい。
【問題】
次の4人は、いずれも六歌仙に含まれている歌人です。この中に、1人だけ小倉百人一首には入っていない歌人がいます。誰でしょうか?
(a)僧正遍昭 (b)文屋康秀 (c)喜撰法師 (d)大友黒主
みなさんには、正解がわかっただろうか。まず、先に答えを言ってしまおう。
六歌仙のうち、小倉百人一首に入っていないのは、(d)の大友黒主で、これが正解となる。古文や文学史、カルタに詳しい人であれば、すぐに答えがわかっただろう。六歌仙には、この他に在原業平と、小野小町がおり、この2人も、小倉百人一首に入っている。実は、この問題では一般の人でもなじみの深そうなこの2人を、敢えて選択肢に含めないことで、クイズの難度を引き上げている。
さて、このクイズを、一般の人100人に出題するとしよう。この100人の中には、文学や歴史に詳しい人や、そういう分野にまったく興味がない人など、いろいろな人がいるはずだ。そこで、例えば次のような状態だったとしよう。
・100人のうち、約3分の2にあたる64人は、まったく答えがわからない。
・21人は、選択肢の4人のうち、小倉百人一首に入っている人を1人だけは知っている。
・14人は、選択肢の4人のうち、小倉百人一首に入っている人を2人知っている。
・最後に残る1人だけが、小倉百人一首に入っている人を3人とも知っていて、正解がわかる。
このとき、100人の回答の分布は、平均的にどうなるだろうか。
まず、全く答えがわからない64人は、とりあえず、あてずっぽうで(a)~(d)の中から1つを選ぶだろう。4つの選択肢に均等に回答が分かれるとすると、それぞれの選択肢に16人ずつ(=64人÷4)の回答となる。(d)を選ぶ人は、平均して、16人となる。
小倉百人一首に入っている人を1人は知っているという21人は、その1人を除いて、残り3つの選択肢から1つを選ぶだろう。そうすると、(d)を選ぶ人は、平均して、7人(=21人÷3)となる。
小倉百人一首に入っている人を2人知っているという14人は、その2人を除いて、残り2つの選択肢から1つを選ぶ。そうすると、(d)を選ぶ人は、平均して、7人(=14人÷2)となる。そして、正解を知っている最後の1人は、当然、(d)を選ぶ。
これらを足し算すると、(d)を選ぶ人は、31人(=16人+7人+7人+1人)となる。一方、(a)~(c)の選択肢は、いずれも、23人ずつとなる。
これはあくまでも平均的な分布ではあるが、正解の(d)が多数派となることは、ほぼ間違いないだろう。
100人の状態が少し違っていて、まったく答えがわからないという64人以外の36人も、小倉百人一首に入っている人を1人しか知らなかったとしよう。この場合、36人のうち、(d)を選ぶ人は、平均して、12人(=36人÷3)となる。結局、(d)を選ぶ人は28人(=16人+12人)となり、(a)~(c)の各24人を上回る。やはり、正解の(d)が多数派となる可能性が高い。
このように、択一形式の問題では、正解を完全には知らない人どうしでも、それぞれが持つ断片的な知識を集めると、正解を選ぶ確率を高めることができるのである。よって、…
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