アニメやドラマの題材にも使われ、昨今人気が高まっている「競技かるた」は、読手(どくしゅ)の読んだ「上の句」を聞いて「下の句」が書かれている札を取り合うという対戦競技である。
対戦は小倉百人一首の100枚の字札の中から50枚を用いて行なわれ、自分側(自陣)に並べられた25枚の札が先になくなった方の勝ちであるが、「自陣の札を取ったらそのまま自陣から札が一枚なくなる」「敵陣の札を取ったら自陣から任意の一枚を敵陣に送り込める」「お手つきをすると敵陣から一枚送り込まれる」などのルールに従って進行していく。
そんな競技かるたの魅力と、これから初めてみたいという人へのアドバイスを、全日本かるた協会A級登録選手で、さがみ野会会長の門松輝洋氏に聞いた。
まず門松氏は開口一番、競技かるたの魅力を「老若男女分け隔てなく同じ土俵で戦える競技であるところでしょう」と語った。もちろん強さによるクラス分けは存在するものの、若いから、年配だから、男だから、女だからはハンデにならないという。
「もちろん、上の句と下の句を覚えないことには始まりませんが、覚えてしまえば、老若男女どなたでも対戦することができます。そこは将棋に似ているかもしれませんね。将棋も駒の動かし方さえ分かってしまえば誰にでも遊べますからね。
確かに最初は敷居の高こそありますが、それさえ越えてしまえば誰にでも平等。もちろん将棋と同じで、そこからが深い世界でもあるんですけれどね」(門松氏)
そしてもうひとつ「最後まで勝負の行方が分からない」という点も、競技かるたの魅力に一役買っているそうだ。
「例えば敵陣の札が残り1枚、自陣には25枚残っていたとします。確かに状況的には絶体絶命ですが、それでも25回連続で取ってしまえば逆転勝利となるわけです。野球は9回2アウトからなんていいますが、競技かるたも『敵陣残り一枚から』がいえるのですよ」(門松氏)
■句を暗記するとっておきのコツ
では、そんな競技かるたを始めたい人は何から準備すればいいのだろうか? これには「上の句と下の句が分からないことには始まりませんので、札の暗記からでしょうね」という予想通りの回答であったが、その覚え方には思わず「ほう」と唸るものがあった。
「最初は”1字決まり”の7首から始めて、徐々に2字決まり、3字決まり……と順に覚えていくとよいです。とくに初心者には“あいうえお”順の暗記はお勧めできません。実は“あ”から始まる歌は16首もあって、まずここで挫折してしまうんですよ。
ちなみに私は単語帳を使って覚えました。表に上の句と決まり字、裏の下の句を書いて……テスト前の学生が英単語を覚えるようにして覚えましたね」(門松氏)
ちなみに”1字決まり”とは、100首の中でその音から始まる歌が唯一存在する札で、「む」「す」「め」「ふ」「さ」「ほ」「せ」の7音が該当する。例えば「む」の音から始まる歌は「むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに(上の句)」のみなので、読手が「む…」と発した瞬間に「きりたちのぼる あきのゆふぐれ(下の句)」の取り札が確定するというわけだ。
このように覚えてしまえば誰でも楽しめる「競技かるた」だが、驚くことに40代から始めて(最高ランクである)A級に昇級する人もいるほど、やる気さえあれば誰でも上達する競技なのだそうだ。