競技かるたは格闘技だ 初心者記者が入門体験

はかたもみぢ会で競技かるたを練習する記者(右)。小学生を相手に手も足も出ない…
はかたもみぢ会で競技かるたを練習する記者(右)。小学生を相手に手も足も出ない…


 畳の上。ぴーんと張り詰めた空気。上の句が読まれた瞬間、札がはじき飛んだ-。1月、大津市の近江神宮で、小倉百人一首競技かるたの女性日本一を決めるクイーン位決定戦を取材した。あの時の衝撃が今も忘れられない。記憶力や反射神経が試され、札争いで接触し指の骨を折ることもある激しさから「畳の上の格闘技」とも言われる競技かるた。最近では漫画「ちはやふる」のヒットで中高生を中心に人気が高まる。競技かるたの魅力をもっと知りたい。福岡市のかるた会の門をたたいた。

3月中旬、同市城南区の南片江公民館。「読手(どくしゅ)」が百人一首の上の句を読むたびに、子どもも大人も一斉に札に手を伸ばす。額には汗がにじみ、表情は真剣そのもの。ここは竹井まやさん(44)が代表を務める「はかたもみぢ会」だ。

まず、竹井さんにルールを教えてもらった。「相手より多く札を取ると勝ちと思う人がいますが、違います」。下の句100枚の札のうち50枚(残りは空札)を使い、自分の陣地(自陣)と相手の陣地(敵陣)に25枚ずつ並べて取り合い、先に自陣の札がなくなった方が勝ち。敵陣の札を取ると自陣の札を相手に渡すことができ自陣を減らせる。

さっそく小学4年(当時)の中村亮君(10)にお手合わせを願う。しかし、そもそも歌を知らない記者は手も足も出ず、数枚取れただけで惨敗した。1時間を超す対戦で、集中しっぱなしの頭はくらくら。膝を立てて札を狙う姿勢はきつく、1試合で疲労困憊(こんぱい)となったが、大会では優勝まで6、7試合戦うこともあると聞き、絶句した。

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競技かるたは100年以上の歴史があり、今では、競技人口は約100万人に上る。全日本かるた協会が公認する大会は、A級(4段以上)、B級(2、3段)、C級(初段)、D級(無段)、E級(初心者)と実力別に分かれており、6月に宗像市で開かれるE級の大会出場を目標に決めた。

3月下旬、レベルアップを目指し、九州かるた協会(福岡市)の内川信幸会長(52)に指導を仰ぐ。

勝負を分けるのは、そこまで読まれれば札を特定できるという「決まり字」。例えば「さびしさに-」のように「さ」で始まる歌は1首しかないので「さ」と読まれた瞬間、札を取れる。一方、「あ」で始まる16首のうち「あきのたの-」と「あきかぜに-」の場合、3文字目が読まれないと札を取れない。しかし片方がなくなると残りの札は「あき」で取れる。競技が進むと札の数が減るので、決まり字も変化する。

選手は札の位置や刻々と変わる決まり字を把握しており、トップ選手になると「さ」の場合、発音は「Sa」だが、半音の「S」の段階で札を取ることも可能という。内川さんは「上級者は0・01秒を競う。音が重要な競技かるたは読手との勝負でもある」。

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どうにか全100首を覚えた3月末、第61期クイーンとなった鶴田紗恵さん(22)が練習すると聞き、母校の九州大を訪ねた。もちろん初心者が対戦できるはずもなく、鶴田さんの試合を間近で見学させてもらった。

鶴田さんの指は真っすぐに札に向かって迷いがない。決まり字が読まれた瞬間、相手の手より低く、正確に札をはじく。記憶力、集中力、瞬発力…。ただただ、ため息しか出なかった。

 

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