近年、“とにかく活きの良いプロデューサー”として日本映画界に名を刻み始めた男がいる。その名は、北島直明。成功に導いた作品は数あれど、北島氏の名を最も世に知らしめたのは「ちはやふる 上の句」「ちはやふる 下の句」ではないだろうか。そして、待望の完結編「ちはやふる 結び」が3月17日に封切られる。
映画.comでは、年間を通じて北島氏に密着。映画プロデューサーという仕事に焦点を当てながら、活きが良いだけでなく丁寧な作品づくりに定評のある北島氏が、現場で何を考え、次なる一手をどのように放とうとしているのかに追ります。
徳島県出身の北島氏は、2004年に日本テレビ入社。8年間にわたり営業畑を歩んだ後、12年に事業局映画事業部への異動をかなえる。幼少期から映画少年だった北島氏は、第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、ハリウッドリメイクも決定している「藁の楯」をプロデュース。その後も、「オオカミ少女と黒王子」「斉木楠雄のΨ難」などをプロデューサーとして成功に導き、「22年目の告白 私が殺人犯です」ではエランドール賞プロデューサー奨励賞を受賞している。
今年は「ちはやふる 結び」以外に「ママレード・ボーイ」と「50回目のファーストキス」の公開を控えるなど、まさに引っ張りだこの状態が続いている。
競技かるたの世界を描いた「ちはやふる」には広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、松岡茉優ら若手実力派が顔を揃えているが、オーディションで合格を勝ち取った段階では、世間的には無名といわれても仕方がないほど各々の知名度は高くなかった。
それでも、不退転の覚悟で撮影に臨んだキャスト陣は、作品世界を踏襲するかのごとく飛躍的な成長を遂げ、「上の句」「下の句」の累計興行収入約28億5000万円という大ヒットを記録するまでに作品を牽引していった。
完結編「ちはやふる 結び」の製作が発表されたのは、16年4月29日に行われた「下の句」初日舞台挨拶の終盤だったが、製作サイドはいつ“決断”をしたのだろうか。北島氏は、手帳を見ることなく淀みなく言い切る。
「僕の中で『続編を作りたい!』と思ったのは、『上の句』の初号試写があった15年11月27日。原作者の末次由紀さんが涙を流しながら試写室を出てこられて、『うちの子たちをこんなに素敵な映像にしてくれてありがとうございます』と言ってくださった。それから役者の事務所の方々も泣いておられましたし、僕の背中を押し続けてくれた会社の部長が泣いているのを初めて見たんです。それを見たとき、『これだけで終わりたくないな』って思ったんです。
そもそも、キャスティングを進めている時点で続編ありきではなかったんですが、初号の出来を見て、役者の年齢的なことを考えても、もう1本作れると感じました。そういった経緯も踏まえて、『上の句』の初号の日に会社も、部長も『作るべきだ』と賛成してくれました」
メガホンをとった小泉徳宏監督の感触も…
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