■今月の恋の歌
瀬を早み岩にせかるる瀧川のわれても末に逢むとぞ思ふ
(意味)川瀬の流れは速く、たとえ岩で流れが分かれてもすぐ合流する。その川のように一度仲を引きさかれた相手と、必ず一緒になろうと思う。
引き離された恋人
言葉だけをみると川の流れを詠んだ歌のように見えますが、百人一首の中でも恋の歌の代表格です。その理由は意味が分かりやすいからでしょう。
一度分かれた川の流れが下流で合流する情景が頭に思い浮かびます。その情景のように、一度引き裂かれた恋人同士も将来必ず一緒になりたいという思いは、誰もが共感しやすいはずです。
恋に邪魔はつきもの。どんな恋にも困難はあり、時には心ならずも引き裂かれてしまいます。そこで簡単にあきらめてしまうなら、恋とは呼べないのでしょう。今も昔も変わらぬ「恋のかたち」を描いた歌に見えます。
作者の崇徳院は天皇を退位させられるなど、不遇な生涯を送りました。そのため、この歌には作者の無念の思いが込められている、という解釈もあります。しかし歌だけを見れば、困難を必死に乗り越えようとする、愛し合う男女の自然な思いを詠んだ歌のように感じられます。
取り方のポイント◇
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