福井・あわら「ちはやふる」 かるた「切り札」街に活気 /北陸


ちはやふるのコミックを手にする竹内優美さん。中央の巻の表紙が綿谷新=福井県あわら市役所で、大森治幸撮影

温泉のまちとして知られるあわら市が今、かるたで熱い。きっかけは、競技かるたを題材にした漫画「ちはやふる」。主人公の綾瀬千早(ちはや)がかるたに夢中になるきっかけを作った同い年の綿谷新(あらた)があわら市出身との設定だ。広瀬すずさん主演の映画で真剣佑さんが演じた重要なキャラクターでファンも多い。かるたを「切り札」に盛り上がる街を歩いた。

東京に住む千早は小学6年の時、転校してきた新に百人一首の魅力を教わる。新は小学校卒業後に帰郷してしまうが、千早は「かるたを続けていればまた新に会える」とのめり込んだ。

高校に進んだ千早は、新がとある事情でかるたから離れてしまったことを知る。新に会いたいと千早たちが降り立ったのが、JR芦原温泉駅だ。

福井県あわら市
福井県あわら市

 

駅ロータリーでは「ようこそ、あわらへ。」と書かれた千早や新が描かれた巨大看板が出迎えてくれる。近くのイベント施設「aキューブ」もちはやふる一色だ。施設内のカフェにはTシャツや付箋といった限定グッズが並ぶ。店員の伊東芳恵さん(34)は「訪れた人が自由に書き込めるファンノートもありますよ」。ファンの提案で始まったノートは既に2冊目という。

 

かつては、複製原画などを展示するアンテナショップにもなった。現在は閉まっているが、熱心なファンで店にコミック本をそろえたコーナーまで作った宝石・眼鏡・時計店「ニシタ」の西田幸男店長(44)が昨年末にここでオフ会を開くなど、ファンには欠かせないスポットだ。西田さんは「新くんが生活している場所として雰囲気を感じてほしい」と来訪を呼びかける。

駅前商店街そばを流れる竹田川も見逃せない。映画では新が千早からの留守番電話を聞くシーンなどで登場する。川面を鳥が泳ぎ、地元小学生が歌いながら下校するのどかな風景に、散歩の足も軽くなる。

スノー丸の焼き印がかわいいどら焼き=福井市で、大森治幸撮影
スノー丸の焼き印がかわいいどら焼き=福井市で、大森治幸撮影

 

和菓子店「甘党本陣嵯峨」の嵯峨直美さん(49)は、作品に多く登場する和菓子の一つ「スノー丸どらやき」をアレンジした菓子を作った。百人一首の経験者で、漫画にいち早くのめり込み、「かわいい。和菓子屋なんだからこれを作りたい」と思い立った。

市を通じて作者の末次由紀さんに思いを伝えたところ、書き下ろしの「スノー丸」が送られ、どら焼きの焼き印にした。生クリームも入ったどら焼きは冷やして食べるとおいしい。店頭には末次さんからの手紙が飾られている。

6月18日には全国競技かるた女流選手権大会があわら市で開催予定で、作品をきっかけに街全体が活気付いている。市観光商工課の竹内優美主事(30)は「作品を通じてあわらを知ってもらいたい」と期待している。【大森治幸】

 ■メモ 「ちはやふる」

競技かるたに情熱をかける高校生たちの青春ストーリー漫画。主人公・綾瀬千早と幼なじみの太一、千早に競技かるたを教えた新らとの友情や恋愛模様を描く。作者は末次由紀さん。2007年から雑誌「BE・LOVE」(講談社)で連載が始まり、09年のマンガ大賞に選ばれた。アニメ化されたほか、16年には広瀬すずさん主演で映画化され、一大ブームを巻き起こした。原作の連載は続いており、映画も続編の制作が決まっている。

本文はこちら(毎日新聞)

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